「今年の春に値上げしたばかりなのに、また上がるの?」——実はこの秋、キッチンやお風呂、窓やサッシといった住宅設備・建材で、大手メーカーの値上げが集中します。中古住宅の購入やリノベーションを考えている方にとっては、工事のタイミング次第で費用が変わってくる話です。今わかっている範囲を、できるだけわかりやすくまとめました。
1. なぜこの秋、値上げが重なるのか
今年の春先、お風呂を作るときに使う接着剤やコーティング剤の原料(ナフサという石油製品)が、中東情勢の影響で手に入りにくくなり、一部メーカーが新規受注を一時停止する出来事がありました。夏にかけて材料の調達は落ち着き、注文自体は通常通りできるようになっています。
ただし、「モノは届くようになったけれど、価格は元に戻らない」というのが今の状況です。原油や金属の価格、円安による輸入コストの上昇、人件費や運搬費の値上がりは今も続いており、各メーカーはこのコスト増をこの秋から順次、商品価格に反映していく方針を発表しています。
- 石油関連原料の価格上昇(中東情勢の影響)
- 円安による輸入資材コストの上昇
- 物流費・人件費の継続的な上昇
- 春〜夏に一部メーカーで起きた受注混乱は、供給自体は正常化済み
2. 9月・10月に値上げが予定されている主なもの
各メーカーが公表している情報をもとに、9月・10月に価格が変わる予定の主な商品をまとめました。改定率はあくまで目安で、商品や仕様によって幅があります。正確な金額は施工会社の見積もりで確認するのが確実です。
| メーカー | 対象 | 改定率の目安 | 時期 |
|---|---|---|---|
| LIXIL | 外壁・屋根材 | 約13% | 9月1日受注分〜 |
| LIXIL | サッシ・ドア・内装建材 | 約13% | 10月1日受注分〜 |
| LIXIL | エクステリア(門・塀・フェンス等) | 約15% | 10月1日受注分〜 |
| クリナップ | キッチンなど全商品 | 約10% | 10月2日受注分〜 |
| YKK AP | 住宅用サッシ・玄関ドアなど | 約10〜15% | 10月受注分〜 |
| Panasonic | 床材・室内ドア・玄関框・収納など | 約10%中心 | 10月1日受注分〜 |
| WOODONE | システムキッチンなど住宅設備 | 約15% | 8月18日受注分〜 |
| 三協アルミ | 住宅・エクステリア商品 | 改定予定 | 10月〜 |
| タカラスタンダード | キッチン等(資材価格調整費) | 5千〜3万円/台 | 9月1日〜 |
| パロマ | 給湯機器 | 改定予定 | 9月〜 |
| アイカ工業 | 住宅建材の一部 | 改定予定 | 10月〜 |
| 旭ファイバーグラス | 断熱材(グラスウール) | 15%以上 | 9月1日出荷分〜 |
断熱リノベーションを検討中の方にとっては、断熱材の値上げも見逃せません。グラスウール(綿状の断熱材)は戸建てのリフォームで広く使われている素材のため、断熱工事全体の費用に影響する可能性があります。
「水まわり」だけではなく、床・建具・壁紙にも
見落とされがちですが、内装材の値上げも実はかなり進んでいます。壁紙・床材・カーテンなどを扱うサンゲツは、すでに7月受注分から取引価格を約18〜30%改定しました。建具・収納・床材を扱うDAIKENも7月出荷分から、床材15%、室内ドアや収納・階段・造作材が10%、天井材が10〜20%という改定を行っています。キッチン・浴室・洗面を扱うトクラスも6月から約10%の改定を実施済みです。
つまり、キッチンやお風呂だけでなく、窓、玄関ドア、フローリング、室内ドア、収納、壁紙まで——フルリノベーションで使う商品のほとんどが、今年すでに何らかの形で値上げの対象になっています。ひとつひとつの改定率は数%〜十数%でも、家一棟分すべてに積み重なると、工事費全体への影響は小さくありません。
今回まとめたのは9月・10月に集中している改定ですが、年末にかけてさらに値上げが予定されているものもあります。たとえば給湯・お風呂で知られるTOTOは水回り全製品を12月1日受注分から約8〜13%、窓メーカーのエクセルシャノンは12月1日受注分から商品10〜20%・運送費10%の改定を予告しています。「秋を乗り切れば落ち着く」というより、この流れは年をまたいで続く可能性が高いと見ておくのが実態に近いでしょう。
「値上げ前に契約すれば大丈夫」とは限らない
もうひとつ、知っておくと安心なことがあります。新価格がいつから適用されるか、その基準日はメーカーによってバラバラだということです。「受注日」を基準にするメーカーが多い一方、「出荷日」「納品日」を基準にするメーカーもあります。たとえばトクラスでは、5月末以前に見積もりを作成していても、実際の納品が9月以降になる場合は新価格が適用されるとされています。つまり「値上げ前に契約書を交わしたから安心」とは限らないということです。工事を予定している方は、契約日だけでなく「いつ商品を発注するのか」「いつ納品されるのか」まで、施工会社に確認しておくと安心です。
参考:窓ガラスと木材の動き
窓の交換を考えている方に、もうひとつお伝えしたいことがあります。実はサッシ本体だけでなく、はめ込む「ガラス」自体もすでに値上がりしています。大手ガラスメーカーのAGCは、フロートガラスなどを7月納品分から約20%値上げしました。つまり窓リフォームは、サッシとガラスの両方でコストが上がっているタイミングということになります。
木材や合板については、9月・10月に「何%」という明確な発表はまだ多くありませんが、専門機関からは2026年後半にかけて価格が上昇し始める可能性が指摘されています。柱や梁、フローリングなど木を使う部分が多いリノベーションでは、今後の動きにも注意しておくとよいでしょう。
なお、値上げの波は住宅設備・建材だけにとどまりません。この秋は食品や紙製品(ティッシュ・トイレットペーパー・紙おむつなど)でも大手メーカーの価格改定が相次いでおり、9月は食品だけで4,500品目を超える見通しです。原因は建材と同じく、原材料高や物流費の上昇、中東情勢によるコスト増によるもの。住まいの計画だけでなく、家計全体で「秋は値上げが重なりやすい時期」と捉えておくとよさそうです。
改定率や時期はメーカーの発表に基づく目安です。商品の型番や仕様によって金額は変わりますので、正確な内容は施工会社の見積もりでご確認ください。
3. 影響が大きいのは「水まわり」「外まわり」「内装」の3つ
今回の値上げの特徴は、キッチン・お風呂などの「水まわり」、窓・サッシ・外壁などの「外まわり」、そしてフローリングや室内ドア・壁紙などの「内装」まで、家のほぼ全域に広く及んでいることです。中古住宅のリノベーションでは、このすべてが工事の対象になるケースがほとんどです。だからこそ、「知らずに見積もりを取ったら、思ったより高くなっていた」ということが起きやすい時期でもあります。
値上げの影響が大きい工事
- キッチンの入れ替え
- お風呂・洗面台のリフォーム
- 窓・サッシの交換
- 外壁・屋根の張り替え
- 玄関ドアの交換
- フローリング・室内ドア・収納の新設
- 壁紙(クロス)の張り替え
比較的影響が小さいもの
- 耐震・断熱の下地工事
- 太陽光発電
- 間取り変更を伴わない部分改修
- 既存を活かして手を加えない箇所
4. 値上げ前にできること、慌てなくていいこと
こういうニュースを見ると、「急いで契約しないと損をするのでは」と焦ってしまいがちです。でも、家づくりやリフォームは金額だけで決める買い物ではありません。まずは落ち着いて、次のような視点で考えてみてください。
すでに工事の予定が決まっている方
キッチンやお風呂、窓の交換など、時期や仕様がある程度固まっているなら、9月・10月の改定日より前に発注できないか、施工会社に相談してみる価値はあります。特に受注日を基準に新価格が適用されるケースが多いため、発注のタイミングを把握しておくと安心です。
まだ検討中の方
「値上げ前だから」と急いで決める必要はありません。値上げは今回だけの一時的な出来事ではなく、ここ数年続いている流れの一部です。焦って仕様を決めるより、間取りや暮らし方に合った選択をすることのほうが、長い目で見て満足度につながります。
大切なのは「安く買うこと」より「予算の使い方」
家は何十年も暮らしていく場所です。数万円・数十万円の値上げを避けたいがために急いで決めた結果、「もっと断熱を考えておけばよかった」「この間取りにすればよかった」となってしまっては、本末転倒です。値上げすることを知ったうえで、限られた予算をどこに使うかを考えることのほうが、実は大切だと私たちは考えています。
中古住宅のリノベーションには、新築とは少し違った選び方があります。すべてを壊して新品にする必要はなく、まだ活かせる構造や部分は残しながら、耐震性能・断熱性能・窓・間取りなど、これから長く暮らすうえで大切な部分にこそ、きちんと予算を使う。そんな「何を残して、何を変えるか」を選べることも、中古住宅+リノベーションの魅力のひとつです。
値上げは国の補助金制度と組み合わせることで、実質的な負担を抑えられる場合があります。窓の断熱リフォームや給湯機器の交換など、国が力を入れている工事には補助金の対象になるものも多くあります。値上げの話だけでなく、使える制度も合わせて確認しておくと、より納得のいく判断がしやすくなります。
5. まとめ:大切なのは「知っておくこと」
この秋は、キッチン・お風呂・窓・外壁だけでなく、フローリングや室内ドア・壁紙といった内装材まで、住まいのほぼ全域に関わる建材・設備が、複数のメーカーでほぼ同じ時期に値上がりします。だからといって焦って契約する必要はありませんが、「知らないまま見積もりを取って驚く」ことは避けられます。工事の予定がある方は、契約日だけでなく発注・納品のタイミングも施工会社と一緒に確認しておくと安心です。
熊本エリアで中古住宅の購入やリノベーションを検討されている方は、値上げのタイミングや使える補助金制度も含めて、いつでもご相談ください。無理な提案はせず、状況を整理したうえで一緒に考えます。