このたびの地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。突然の揺れで、不安な時間を過ごされている方も多いことと思います。「壁にひびが入ったけれど大丈夫だろうか」「屋根瓦がずれているように見える」「何から始めればいいのか分からない」——そんなときこそ、慌てずに、一つずつ順番に進めることが大切です。今回は、住まいに被害を受けた際に知っておきたい基本的な流れと、最初に確認していただきたいポイントを、できるだけ分かりやすくまとめました。
1. まずは、ご自身と ご家族の安全確認から
住まいの被害が気になるお気持ちはよく分かりますが、何よりも優先していただきたいのは、ご自身とご家族の安全です。建物にひびや傾きが見える場合は、無理に中に入らず、まずは離れた安全な場所で過ごしてください。
ガスの臭いがする、床が大きく傾いている、壁に大きな亀裂が入っているといった場合は、専門家による確認が終わるまで建物内に立ち入らないようにしてください。余震が続くこともありますので、屋根や外壁に近づく作業はできるだけ避けましょう。
2. 修理の前に、被害の様子を写真に残しておく
安全が確認できたら、片づけや修理を始める前に、被害の様子をできるだけ多く写真に残しておいてください。これは後ほどご説明する「り災証明書」の申請や、保険の手続きの際にとても役立ちます。
建物全体が分かる引きの写真と、ひび割れや破損箇所をアップで撮った写真の両方を残しておきましょう。同じ場所を複数の角度から撮っておくと、後から見返したときにも状況が伝わりやすくなります。日付が分かるようにしておくと、より安心です。
3. 「り災証明書」とは、どんな書類なのか
り災証明書とは、地震などの災害で住まいに被害を受けたことを、お住まいの市区町村が証明してくれる書類です。被災者生活再建支援金の給付や、税・保険料・公共料金の減免や猶予といった、被災された方向けのさまざまな支援策を申請する際に必要となります。つまり、この先いろいろな手続きをする場面で「まず最初に必要になる書類」と考えていただくと分かりやすいかと思います。
4. り災証明書の申請方法(今回の地震での対応)
今回の地震では、り災証明書の申請方法として大きく2つの方法が用意されています。
オンライン申請
- マイナンバーカードを使って、マイナポータルから申請できます。
- 対応状況は自治体ごとに異なり、熊本市・八代市・宇土市など複数の自治体で対応が始まっています。
- 役所に出向く必要がなく、ご自宅から手続きできます。
窓口申請
- お住まいの市区町村の窓口でも申請できます。
- 被害が軽く、詳しい調査を希望されない一部損壊の場合は、被害状況の写真を窓口に提出することで、確認のうえ即日交付されることもあります。
- 混雑している場合もありますので、事前に窓口の受付時間を確認しておくと安心です。
- 申請できる方法や受付の時期は、お住まいの市区町村によって異なります。まずはお住まいの自治体のホームページや窓口で、最新の情報をご確認ください。
- 熊本市では、り災証明書(住家)の申請期限が令和8年10月31日(土)までと定められています(窓口受付は10月30日(金)まで)。他の市区町村でも期限が設けられていることがありますので、お手続きはお早めに済ませておくと安心です。
5. 修理を急がない方がよい理由
「早く元通りにしたい」というお気持ちはとてもよく分かります。ただ、り災証明書は被害の程度を確認したうえで発行される書類ですので、調査が終わる前に本格的な修理を進めてしまうと、被害の程度をうまく確認してもらえなくなることがあります。
雨漏りを防ぐためのブルーシート掛けなど、安全のための応急的な対応は問題ありません。ただし、屋根の張り替えや壁の全面改修といった本格的な工事については、写真の記録を済ませたうえで、お住まいの自治体に一度ご相談いただくと安心です。
6. 被害の程度によって区分が変わります
り災証明書では、住まいの被害の程度に応じて区分が分けられます。区分によって、受けられる支援の内容も変わってきます。
| 区分 | おおまかな目安 |
|---|---|
| 全壊 | 住まいとしての機能をほぼ失った状態 |
| 大規模半壊 | 大規模な補修をしないと住み続けるのが難しい状態 |
| 中規模半壊 | 大規模半壊と半壊の中間程度の被害 |
| 半壊 | 補修すれば住み続けられるものの、被害が大きい状態 |
| 準半壊 | 半壊ほどではないものの、補修が必要な被害 |
| 一部損壊 | 壁のひびや瓦のずれなど、比較的軽微な被害 |
※実際の区分は、専門の調査員による確認をもとに決定されます。上記はあくまで目安としてご覧ください。区分によって、受けられる支援の内容や金額が変わります。
7. 利用できる可能性のある支援について
り災証明書があると、状況に応じて次のような支援につながることがあります。
- 被災者生活再建支援金の給付
- 税金・保険料・公共料金の減免や猶予
- 住まいを失った方向けの、市営住宅などの一時的な住居の提供
- 住まいの応急修理(費用は自治体が修理業者に直接支払う制度)
- 生活必需品の支給、就学援助や奨学金など、生活・教育面での支援
熊本市の例では、住まいの被害状況に応じて、住宅の応急修理は1世帯あたり数十万円を上限に支援を受けられる制度があります。ただし「先に修理業者へ代金を支払ってしまうと制度が使えなくなる」など、順番を間違えると利用できなくなる支援もあります。工事を依頼する前に、必ずお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
支援の内容や金額、申込期限は、お住まいの市区町村や被害の程度によって異なります。まずはり災証明書を取得したうえで、お住まいの自治体の窓口にご相談いただくのが確実です。
8. 修理業者とのトラブルにご注意ください
災害の後は、突然訪問してきて「今すぐ工事しないと危ない」「屋根を無料で点検します」などと不安をあおり、高額な契約を急がせる業者が現れることがあります。少しでも「おかしいな」と感じたら、その場で契約せず、一度持ち帰って考えてください。
賃貸アパートからの退去や、住宅修理工事に関する事業者とのトラブル、不審な電話・訪問などでお困りの際は、お住まいの自治体の消費生活相談窓口にご相談いただけます(熊本市の場合:熊本市消費者センター 096-353-2500、平日9:00〜17:00)。信頼できる業者かどうか迷ったときも、お気軽にご相談ください。
9. こころの負担も、決して我慢しないでください
災害の後は、住まいのことだけでなく、気持ちの面でも負担がかかりやすいものです。しばらく時間が経ってから、不安や落ち込みが出てくることも珍しくありません。
眠れない、気持ちが落ち着かないといったことがあれば、一人で抱え込まず、こころの相談窓口をご利用ください(熊本県内の場合:熊本いのちの電話 096-353-4343〈24時間対応〉など)。ご自身のことでも、ご家族やお子さまのことでも構いません。
10. これからの住まいについて、ゆっくり考える
り災証明書の手続きが落ち着いてきましたら、「このまま修理して住み続けるか」「思い切ってリノベーションするか」といったことを、ゆっくり考えていただければと思います。今すぐに答えを出す必要はありません。
まずは安全の確保と手続きを優先し、住まいの今後については、気持ちが落ち着いてから、ご家族とも相談しながら検討していただければと思います。